疾走

丸眼鏡の青年が自転車で坂を下りながら、片手で何かを頬張っていたので、すれ違いざまに
「おいしいかい?」
と訪ねてみた。返事は無い。
なぜなら私は窓を閉め切った車に乗っていたから。そして、その車が時速40kmくらいのスピードで走っていたから。彼は気付く素振りすらなかった。風も強く吹いていたから…。