イメージの解放者

 例によって洗濯をしている30分の間、夜の町を散歩した。
 何かの手違いで担当地域以外の場所に迷い込んでしまった宅配サービスのおじさんが電話をしていたが、その声がブルース・ウィリス(吹き替え)に似ていて、笑った。後ろで救急車が停止したようだった。
 商店街に出た後、適当な路地に入ってみた。ふと横を見ると「カラオケ・サウナ」の文字が。この商店街に来る時は大抵の場合、坂を下って来るのだが、その時遠くにこの「カラオケ・サウナ」が見えるのである。しかし2年以上もこの町に住んでいて、その店に辿り着いた事はなかった。その店が今日比較的近くに見えた。今日こそ行ってみようと思い、そこに至る道を探し始めた。最初いた通りから一本ずれた通りに入り口はあった。深夜12時でも営業中である。奥からカラオケかテレビかの音が聞こえてくる。
 再び商店街の通りに出ようとすると、商店街の入り口の門が見えた。時計が備え付けられた門だ。門の先に見えるのはよく行くコンビニ。瞬間、時間が巻戻った。この時計のある門は、2年程前に強く意識した記憶のある門だった。その日から今日までこの門をくぐった事は無かったと思う。
 救急車は新聞屋の前に停まっていた。居酒屋から聞こえた声がサザエさんのサブちゃんの声に似ていて、笑った。