散華

 歩行者天国になっている橋の上を歩く人々は、暗い灯かりに照らされて、死人のような肌をしている。大勢いる死人の肌の人たちと並んで歩きながら、自分の左手を右手で抓んでみた。
 数年前に石油屋の前でビールを売っていた幼馴染は、今年も石油屋の前に居た。生ビールを泡少なめで注いでもらった。彼以外には、知った顔は見えない。皆的屋になれば会いやすいのに。
 焼きソバと広島風お好み焼きを買い、土手に腰を下ろした。前と比べて、若干人が減っているか。それとも街の暮らしで人ごみに慣れすぎたのか。広島風お好み焼きというと、かつて川越の祭りで食べたものが、良い思い出として残っている。今回のものも旨かったが、お好み焼きというよりキャベツと言った方が良いかもしれない。旨いキャベツだった。
 花火を見る私のうしろで、花火を見ている人たちがいる。
「花火の中に少しでも混ぜてさ、ブァーッて散らして欲しいな。ねえねえ、お母さん聞いてる?俺が死んだらさ…」