地下世界

 いつも通りにバイト。そして稽古。そしてファミレス。何か特別な出来事があったような気もしたのだが、思い出せない。
 代わりに思い出したのは、近くの学校にあった気味の悪いウサギの人形が撤去されていたと思ったら、物置の陰に少しだけ姿を確認出来る事に気が付いたという事。戦慄した。
 ついでにもう一つ思い出した事。一昨日は山手線の運行停止で飯田橋まで回ったのだが、その飯田橋大江戸線の乗り場が素晴らしかった。階段を照らす電灯を仕込んだ奇妙な形のパイプの網のようなものも悪くないが、ホームに繋がる通路が特に良い。ホームはかなり深い地下にあるのだが、通路に縦に並べられた蛍光灯の列が、まるで細い窓から差す陽光のように見えるのだ。その光の微妙に鈍い感じと、地下特有の息苦しさも相まって、何とも言えない異世界感を醸し出している。もし、好きな地下鉄の駅のホームはどこかと聞かれたら、先ず此処を挙げるだろう。