ケアレスミス

 夜の死体置き場。そして帰り道。
 『ドラゴンクエスト3』におけるゾーマとの戦いは、何故あんなにも私の心を打つのか。
 曲が良い、というのも勿論ある。魔王の強大さや勇者の勇ましさに満ちた、荘厳さや緊迫感がありつつもあくまで前向きな曲。素晴らしい。
 シチュエーションを見てみると、父親の死を乗り越え、というあたりはややベタであるが、よく分からない異世界で急に出てきたよく分からない敵と戦うというのは、個人的に好きな状況。「何だか遠くまで来ちゃった感」である。『ドラクエ3』の場合、前半が地球に似た地形だから、そう感じ易いのかもしれない。
 しかし、『ドラクエ3』は、既にソフトの立ち位置からして盛り上がりが約束されているのである。何せ『3』は、『1』と『2』で伝説とされていた勇者ロトの物語。しかしそれを意識してやっていたプレイヤーはどれほどいたろうか。発売当初はそういった情報は伏せられていたのか。感覚を鈍らせていたのは、日常からお馴染みの世界地図であったかもしれない。やがてアレフガルドに到達した時にそれに気付き、ゾーマ戦で日常が伝説に変わる瞬間を感じ、震えるのだ。いずれこの一戦が神話になるのだと奮えるのだ。
 そういった感情を纏め上げるのは、やはり曲だろうか。『勇者の挑戦』という題名がまた絶妙である。『1』と『2』の存在から、その勝負の結果は既に見えている筈なのだが、あくまでも現在進行形で挑む勇者の視点に立っている。曲全体の展開の上手さもあるが、要所で聴ける勇ましいメロディの、シリーズの設定とのマッチングこそが曲の魅力の根幹であると言えよう。
 今日の帰宅途中の車中、NHK交響楽団による演奏を聴きながら、不覚にも射精した。私は、このような曲が『ドラゴンクエスト3』という優れた物語と共にある幸福を、何がしかに感謝せずにはいられない。
 家に着いたのは19時半を過ぎたあたり。夕飯は昨晩の残りの鍋物と、今日新たに作られたおでんであった。帰宅時には鮭もあったようだが、風呂などを済ませている間に無くなった様で残念だ。
 
 文中に誤りがありましたので訂正致します。
射精した

目頭が熱くなった