吉野家にて

 隣に座ったオジサンが何事か言いながらテーブルを指で叩いたので、店員が「何か」と訊くと、オジサンは慌てて手を振って「なんでもない」と言った。どうやら独り言だったらしい。そしてそれを皮切りにオジサンの独り言が急激に増えた。思わず考え事を口に出してしまったのが恥ずかしくなって、独り言キャラという仮面を即席で創り上げたのだろうか。