まったくいけない

 木曜日
仕事を終え、東京へ。
イメージとしては東京へと向かっているという事で正解だが、実際には川崎へ向かっていた。この日から梅雨入りという事で外は雨。家を出る時、私の中で、雨と傘のイメージを繋いでいた線が断線していたようで、濡れた。
 金曜日
日が変わり、世界氏とロリっ娘との3人でのカラオケ。自分の中に眠る古い記憶を封じていたプラスチック盤を用いて、最新のテクノロジー(そう錯覚させるだけで十分凄いのだ)を起動させた。凄かった。
早朝、オウチに帰る為、東京を円周する電車に乗り込んだら、睡魔の魔力で円周しかけてしまい、随分と時間を失ってしまった。ドリームランドでの私(本当の私であるが)は時間を手にしたわけではあるが。
オウチに到着後、昼過ぎまで、惰眠やお弁当などを貪って過ごした。
完全に覚醒した現在、オウチに一人居てもどうしようもないと思い、古巣(の近所)である戸越銀座へ。実に数ヶ月振りに散髪をした。何度か通った店であるが、初めて店主との日常会話が発生。暑いですね、という話。店に飾ってあるグフカスタムのフィギュアについて訊くほどには距離は縮まらなかったという実感。
すっぱりさっぱりとしたところで、帰宅。そして、昼食のお弁当の代価としての部屋の清掃。
やがて家主が帰ってきたので、夕食。謎の異郷の食べ物という風情の、謎のスパゲティのような食べ物が、様々な困難や失敗を経て生まれ、それを食したのだが、なかなか美味かった。
深夜、家主とゲームに興じていたが、途中で力尽き、伏した。
 土曜日
朝、惰眠やブルーベリーヨーグルトなどを貪って過ごした。その後、幼女と入浴したり、自分以外の男の入っている風呂に浮かぶ幼女を、幼女以外の女と覗いたりした。「出てって!」と言われた。
板橋にて稽古。同行していた幼女は、外国人の男に「可愛い」と言われ、頭から大量の血を被った、海外のアクション俳優の如き容貌の男(30歳・無職)は、外国人の男に「ジーザス」と言われていた(らしい)。とにかく、稽古場を汚染し尽した血液のインパクトによって、近いうちに東京を去ろうという一人の男の存在が霞んだ。
この度都落ちの運びとなった田中ガス画伯を送る会を催すという事で、ガス家で小宴会。これから各誌で引っ張りだこになる予定の画伯であるが、これで今生の別れになるかもしれない。そう思い、面白そうだと思ったライブに行くのも止めてみた。
幼女が言った。
「ガスさん終わってない!」
「ガスさんまだ終わってないよ!」
果たして。
 日曜日
一日に一回面白い事があれば十分だ。それ以上は勿体無い。一度の食事には、一品だけ好物があれば十分だ。それ以上は勿体無い。そう思った。そうも思わない時もある気がする。
まあ、何かあってもすぐ忘れてしまうので。上書きされてしまうので。
危うく忘れてしまうところだったが、今日は父の日であったので、夕食は外食であった。疲れている時に酒を飲むとボンヤリしていけない。親子が集まっても死人と病人の話しかしなくていけない。