最終章開幕

 虫歯で歯茎が腫れている。痛みは少ないが、異物が口の中にあるようで嫌だ。とはいえ、腫れを指で押し、クックッと膿を出すのが最近の私の密かな愉しみでもある。
 私はエライので歯医者に行く。帰宅時間が遅いので、夜遅くまで開業している診療所が望ましい。家からそう遠くないリオシカがそうであった気もするので、明日様子を見に行くつもりである。リオシカといえば、中学か高校の時、「貴方の歯茎はまるで五十代の歯茎だね」というような類の事を言われ、「そうか」と思った事も記憶として残っている場所である。残っている、その場所に残留しているのである、記憶が。
 リオシカから少し離れた所にモリシカというものもある。モリシカにはオトナの漫画やコワイ漫画を読んだ記憶が残留している。
 帰宅すると講談社から大きな封筒が届いていた。執筆の依頼、ではない。おお…ジーザス…!